中世の善哉公社 武士の恩賞給付システム
2019年09月20日 (金)

『中世武士の勤務評定』 松本一夫著
戎光祥出版 2019年 1800円
本書の構成は、
第一部 参陣から恩賞給付までの流れ
第二部 軍勢催促・軍功認定・恩賞給付の再検討
第三部 南北朝期の戦闘の実像に迫る
となっている。
第一部では、参陣から恩賞給付までにどのような書類が交わされるかを順を追って解説している。
軍勢催促状を受け取る
着到状提出→着到帳記載→承認を受けた着到状返却
軍忠状提出→承認を受けた軍忠状返却
挙状
感状
申状
充行状
という書類上の手続きが必要になるようだ。軍功認定の手続きのために官僚システムが作られて、恩賞のためとはいえ手続きを辿っていく面倒くささに辟易してしまったことだろう。落語の善哉公社を思い出してしまう。
また、ウモさんの名曲「境目哀歌」の3番に、
俺にかかわり無い軍 先方衆をやらされて
敵の鉄砲で傷負った 兵も沢山失った
だのによ恩賞は 感状一枚これっきり
やってられない やってられない 境目の領主
という歌詞がある。感状を出してもらえるまでも長かっただろうが、その後、所領を手に入れるにはまだまだ道は険しそうだ。
第三部では、兵糧、武器と戦闘形態、石、切岸合戦、堀の埋め方、分捕切葉、旗差、野伏、忍者、生虜、陣所、南北朝期の城郭、文書管理、武家の女性の役割、神仏への信仰などについて、短い解説ではあるが面白い内容になっている。
全編を通じて一次史料に基づいた解説になってるので、思い込みを修正して実態が見えてくると思う。
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